カナディアンカヌー作り第22回 ~ヨークを削る~
2020.05.08
カヌー作りをはじめて1年。予定では昨年秋に完成させ、進水式を迎えるはずだった。が、作業がなかなか進まずスケジュールは大幅に遅れている。しかし、丁寧に作業を進めているおかげで、仕上がりはご覧のとおりキレイだ(自画自賛)。現在は新型コロナウイルスの蔓延で、非常事態宣言が出されてしまい工房も休館を余儀なくされている。外出自粛でストレスを溜める日々が続くが、カヌー作りを見てくださる皆さんの気分が少しでも変わるように、3月に行ったカヌー作り第22回目のリポートをお届けする。(※非常事態宣言が出される以前に撮影したものです)
雨天のためFRPは断念……。そこで今回はヨーク作りに挑む
前回は長かった研磨を終え、次回は晴れて気温が高ければ、いよいよ内側のFRPというところまで進んだ。今回、名栗湖周辺は朝から雨……。FRPを断念せざるを得ない状況だ。しかし、まだまだやることは沢山ある! ということで、今回はカヌーの内側に取り付けるヨーク(カヌーの内側で成形を保つため、そしてバランスをとるために取り付けられている手すりのような部分)を削る作業に着手した。
手こずった内側の研磨を終え、ようやく内側のFRP作業と思いきや本日は雨。天候に左右されるせいでスケジュールが遅れるのだ(責任転嫁)。
◆慣れない工具と硬いヒノキに思わず力が入る!
材料を用意。カヌーの前と後ろに取り付けるため幅100mm、厚さ30ミリほどの木材(ヒノキ)を2枚使う。ヒノキは丈夫で硬いので耐久性もあるのだ。そこに鉛筆と曲尺(L字型の定規)でラインを引いていく。
まずは実際に取り付けられているヨークを見本に大体の幅を測る。
幅を測ったら、長さを測って中心線を決める。この中心線を軸にどれぐらいどんな形で削るかはその人の自由なのだそう……正直、困る。
ガンネルに接続する両端の部分は削りすぎると折れる可能性があるので5cmほど削らない部分(見えにくいが両端の斜線の部分)を作り、そこを元に削る形にラインを引いていく。
ここからは、屋根付きの屋外にでて木材を切断する作業に。今回使用するのはジグソーと呼ばれる片持ちブレード方式の電動切断工具。ジグソーの切断力も凄まじいが、ヨークに使うヒノキは木材の中でも硬く、なかなか刃が前に進まない。緊張から肩に力が入りすぎ、この切断で腕の筋力を使ってしまう。のちの作業に響かなければいいのだが……。
木の節などがあるとその部分が硬くて刃がなかなか前に進まない。無理に刃を進めていくと、刃が折れることもあるので慎重に作業を進める。曲線を切り進めていくのがなかなか難しい。
カメラマンのカナイもやってみたいとのことで、ジグソーでの切断を体験。宮大工の息子ということもあり、何事もなくスムーズに切断し、余裕の表情を浮かべる(ドヤ顔)。
切断を終えて「ドヤっ!」といわんばかりの表情(我ながらムカつく顔)。ここで午前中の作業はあっという間に終了した。
◆手に馴染むような曲線を作るように削る
午後は削り作業。まずはお馴染みのディスク・グラインダーで切断面の角を落としていく。角を削り、角ができたらまた削るという感じで多角形を作りながら削ると、徐々に角が丸くなっていくというイメージだ。
この作業も屈むような姿勢のため、長時間続けると腰が痛くなる。そしてディスク・グラインダーの重みも相まって、腕がどんどん疲労していく……。
カメラマンのカナイも撮影をしながらの同時進行で、ヒノキの角材を丸くしていく作業に着手。これも同じように角を落としながら、どんどん丸く削っていくのだ。
ある程度、ディスク・グラインダーで角を落としたら、今度はミニサンダーで表面を滑らかにしつつ、曲線を作っていく。ディスク・グラインダーは削りすぎてしまうので、やりすぎるとヨーク自体がどんどん細くなるが、ミニサンダーなら安心だ。
ミニサンダーを動かしつつ、ヨークも動かすとかなり丸みを帯びてきた。この時点で、午前中のジグソーで力が入りすぎたせいか、腕には疲労がたまっており、パンパンの状態。心なしか休憩が多くなる。
カメラマンのカナイも黙々と作業に没頭する。角材がどんどん丸くなっている……。もはや職人だ。
最後にサンドペーパーで仕上げていく。かなり表面が滑らかになっているのがわかる。
◆今日の作業はここまで!
普通だったヒノキの板が、曲線を帯びたヨークに変化した。削ることで美しい木目も浮かび上がってきて何ともいえない趣のある雰囲気に仕上がって大満足のクルー。工房長の町田さんからも「キレイに仕上がってます!」とお褒めの言葉をいただき、本日の苦労が報われた。次回こそ、天気で気温が高ければ内側のFRP作業ができるのだが天候ばかりは、もはや天に祈るしかないだろう。次回、FRP作業着手できるのであろうか? 第23回へ続く!
◆作業の様子を動画でCheck!
STAFF CREDIT
Photography:Ren Kanai
Writing:Yasuyuki Ushijima
Movie Photographer:Ren Kanai