カナディアンカヌー作り第16回 ~試練の研磨 その2~
2020.01.20
前回の研磨作業ではカヌー全体(外側)の5分の3ほどを磨き終えたが、今回は残る部分の磨きに加え、カヌーの美しいボディラインを実現すべく、より繊細な磨きも合わせてこなしていく。
コーディングが白くなり、玄人好みの“アジ”が出てきたカヌー
前回(1回目)の研磨後、ミニサンダーの振動で腕や手首が筋肉痛になるなど、少し体に異常があらわれたことで、研磨がひと筋縄ではいかないことが分かった。前回は磨いた後に出てくる白い粉による影響はなかったが、この研磨後の粉の恐ろしさを知ることになるとは……。クルーたちはまだ知る由もない。
ミニサンダーで磨いた部分は白くなる。これが研磨した証だ。前回と同じように粉塵を吸わないように気をつけながら作業していく。
◆ゴーグルと粉塵マスクは研磨作業の必需品
前回も説明したが、FRPコーティングの研磨時に出る粉塵は、ガラス成分を含んでいるので身体にとってよくないもの。だからこそゴーグルと粉塵マスクはマストアイテムなのだ。
両手で体重をかけながらミニサンダーをボディに当てていく。研磨そのものは単純な作業なのだが、実際にやってみるとこれがなかなのハードワーク(苦笑)。ミニサンダーが発生する細かいバイブレーション(振動)が徐々に両腕を蝕んでいくことを、クルーたちは知る由もなかった。
振動で粉塵がボディの中央に集まってくる。粉がまるで生きているようにうごめくのも面白い。
削った粉塵をエアコンプレッサーを使って吹き飛ばしながら作業を進めていく。
この日の天気は曇り。名栗湖のまわりの山々には靄がかかるなど、何か不吉な予感を感じずにはいられない。まるで天が我々に試練を与えているのでは!? そんな印象を受け受けながら作業に臨んだ……。
クロスが重なっている部分は、コーティングに厚みがあるので、ディスクグラインダーである程度削ってから、研磨するとキレイになる。黙々と研磨を続けるクルーたち、あっという間にお昼ご飯の時間になった。
◆午後も休憩をはさみながら研磨に打ち込む
昼食も手短に済ませて作業を再開。午後もひたすら研磨作業が続く。午前中の作業で既に両腕の握力がなくなり、ミニサンダーのバイブルレーションの後遺症で磨き作業をしようとすると、腕がしびれたような感覚に襲われまともに研磨することができない。一気に作業を進めようとせず、こまめに休憩を挟みながら、作業を繰り返していくことが、スマートに作業をこなすコツらしい。
ガンネル部分はクロスがはみ出ている。このままでは美しくないのでミニサンダーで削り落としていく。
ガンネルに沿いながらミニサンダーをかけていくと……。
このようにキレイに剥がれていくのだ。
ずっと立ちっぱなしで作業をしていると、腰も痛くなってくるので、下(ガンネル部分)のほうを研磨するときはしゃがみ込んで作業する。
そして……、やっと前回やり残した部分の研磨が終了。
副工房長の山田さんにチェックしてもらうと「いい感じですね。丁寧に研磨した感じが表れてますよ」と、うれしい評価をいただく。
◆今日の作業はここまで!
まだお昼ご飯を食べてから2時間ぐらいしか作業してないが、やはりミニサンダーによる作業は身体に負担がかかるということで、エアコンプレッサーをかけて本日の作業は終了。
これがなければ作業が終われないという恒例のカットを1枚。2回にわたる研磨はかなり苦労したが、頑張った結果、ボディがかなりキレイになった。しかし、この研磨で出る粉塵は知らぬ間にクルーたちの両腕をむしばんでいたようで、作業日の夜、謎のかゆみに襲われた。第1回目の研磨の時は大丈夫だったが、今回の作業ではアレルギー反応が出たのかもしれない。まだ外側の研磨だけなので、内側の研磨の時は長袖を着用するなど、細心の注意を払っていこうと誓うクルーたちであった。第17回へ続く。
作業の様子を動画でCheck!
STAFF CREDIT
Photography:Ren Kanai
Writing:Yasuyuki Ushijima
Movie Photographer:Ren Kanai