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まだ見ぬイトウを求めて北海道再訪 ~2019 晩秋の道北編を振り返る~ part1

2021.02.05

一昨年の釧路湿原でのカヌー×キャンプ×フライフィッシングでの帰り際、ツアーの主催者であるリバートリップキャメルの辻さんが「晩秋の北海道もいいですよ」と悪魔の囁きをしてくれたのが事の始まり。とりあえずエアのチケットを握りしめ単身、晩秋の北海道へ向かう。そう、向かったのは晩秋の北海道のはずだった。

これはヤバいかもしれない!

遅筆と書けばなにやら文豪らしいが、ただただ1年以上も原稿を寝かすとただの怠け者。ほんとスミマセン。
さて、時は2019年の11月の最終週。向かったのは道北の旭川、目的地はリバートリップキャメルのベースである美深町だ。羽田空港のアナウンスによると現地の天気は晴れ。まぁ確かに晴れではあったが、旭川空港上空から見えるのは一面の銀世界。頭の中で『晩秋』のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。これはちょっととんでもない世界に来てしまった、と頭の中では考えている一方、心の中ではワクワクが止まらない。空港の寒暖計は0℃を割っている。ものすごく寒いはずなのに、寒さのことなどは微塵も感じていなかった。

さて、晩秋の道北釣り紀行の始まり。待ってろアメマス、そしてまだ見ぬイトウ!

機内誌に偶然にも今夜の宿泊先のホテルが紹介されていた。宿泊前から何かの縁を感じる。

今回は旭川から美深まで各駅停車の旅。たくさんの秘境駅を経由して到着した頃はすっかり日が暮れていた。

友人に教えてもらった3室だけの客室の『TOURIST HOME & LIBRARY 青い星通信社』が今夜の宿。

リノベされた石煉瓦の宿は、その名の通りオーナーの思い入れが詰まったライブラリーをラウンジに併設する。

元編集長の肩書を持つオーナーの星野氏。ディナーでは出会いと巡り合わせの楽しい話を聞くことができた。

幻想的な風景の朱鞠内湖を独り占め

早朝、ご主人に見送られてホテルを後にする。ピンと張り詰めた空気が心地いい。向かうのは朱鞠内湖。周囲長は40kmと山手線1周を遥かに超える、中禅寺湖の2倍の面積を誇る日本最大の人造湖だ。ターゲットは前回の釧路川で取り逃した(と勝手に思っている)イトウのリベンジ。もちろん、こんなクソ寒い晩秋に釣りに来る人などひとりもいない。抜けるような晩秋の青空の下、この巨大な湖を貸し切りというわけだ。
慣れないダブハンを闇雲に振りながら夢中でキャスティングしていると、ほどなくヌルッとしたあたりが来た。ニジマスのような走る引きとは違い、深場へと逃げていく。ランディングするとそこには50cmほどのアメマスがいた。美しい虫食い模様に目を奪われる。だが本命は別だ。気づくと晩秋の青空はいつしか初冬の低く垂れ込めた空になっていた。ロッドに雪が積もり、フライが凍りつく。モノトーンでローコントラストの景色の中、タイムリミットギリギリまで粘るもイトウは姿を見せなかった。なんてシャイなやつだ。
帰りのクルマの中でお約束の作戦会議。タックルの話、ポイントの話、夢は広がるばかり。もうひとつの楽しい時間だ。明日はちょっと天気の具合が不安定らしく、再度朱鞠内を攻めるか、はたまた天塩川中流域でアメマス 、下流域でイトウを狙うかは天候次第。しっかり腹ごしらえして明日に備えよう。

辻さんがいつものハイエースで迎えにきてくれる。この時期カヌーは危険なのでフィッシングボートだ。

晩秋というにはいささか雪が多いように思えるが、条件は最高にいい。あとは釣りのセンスだけ……。

朱鞠内湖は辻さんのホームグラウンド。風向きを選びながらポイントポイントを効率よく回ってくれる。

寒さを物ともせず丸っとした元気なアメマス 。くっきりとした虫食い模様と斑点が特徴的だ。

釣りに夢中になってついつい忘れてしまうが、寒い時期こそ腹ごしらえは大切。ランチはキムチうどん。

時間が経つにつれ綿状の雪がノソノソと降ってくる。晩秋のフライフィッシングのはずだったのに……。

こちらは淡い色合いの綺麗なアメマス。だが釣りたいのは白い斑点ではなく、黒い斑点のイトウなのだ。

こんな幻想的な景色の中でフライフィッシングができるなんてなんという贅沢。

ちょっと気を許すとご覧の通りフライがカチコチに凍って冷凍フライになってしまう。

残念ながら初日はタイムオーバー。それでも手応えは感じた。明日に望みをつなぐ。

築90年の煉瓦倉庫をリノベしたレストランBSB(美深白樺ブルワリー)でディナーにする。

白樺樹液で仕込んだ日本最北のクラフトビールが味わえる。しかもなんと10TAP!

レストランの奥にずらりと並んだタンクを眺めながら地元の食材を使った料理でパワーチャージ。

デザートのタルトをオーダーすると、なんという粋な計らい! 明日は大物が釣れる気がする!

◆river trip CAMEL
http://camel-trip.biz/
◆青い星通信社
http://aoihoshi.co.jp
◆レストランBSB
http://bifukacraftbeer.jp

 

STAFF CREDIT
Photography:Takaaki Tsukahara & Ryota Tsuji
Writing:Takaaki Tsukahara

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