クリエイターの嗜好品
~にしのやディレクター/NEATデザイナー西野さん~ 第3回
2019.03.11
誰しも、お気に入りのモノがひとつやふたつはあるだろう。だからこそファッション業界で働く、デザイナーやプレスなどのクリエイターたちがどんなものを選び、愛用しているかは気になるところだ。今連載“クリエイターの嗜好品”ではタイトルどおり、毎月、ファッション業界で働く人々の、これぞという嗜好品をその人の目線から語っていただこうと思う。第3回は国内外のイケてるブランドを取り扱いながら、自身は人気のパンツ専業ブランド「NEAT(ニート)」のデザイナーを務める西野さんのお気に入りを紹介していきます。
道具としての良さがあり、自分のライフスタイルになじむモノ
「Cantate(カンタータ)」や「PT01(ピーティゼロウーノ)」など国内外の旬なブランドのアタッシュドプレスを担当しながら、今最も勢いのあるパンツ専業ブランド「NEAT(ニート)」のデザイナーも手掛ける西野さん。ファッション業界に長く携わる彼は、どのような経歴で今のポジションにのぼりつめたのだろうか。
「本格的にファッションに目覚めたのは、中学1年生ぐらい。よくつるんでいた友達は皆、お洒落なお兄ちゃんがいて、そこから色々ファッションのことを学ばせてもらいました。そこからどんどん興味を持ち始めて、当時流行したナイキのスニーカーとかカシオのデータバンクとかに飛びつくような感じでした」
そこから西野さんは人生の岐路に立つわけだが、どうしても避けて通れない壁があった。
「実は両親が学校の先生をしていました。自分が18歳で進路を決めるときに、本当はファッションの専門大学に行きたかったのですが見事に反対され、大学に進学することになりました。大学生といっても卒業後の進路を決めなければいけません。その時の母親の助言もあって、子供も好きだし、先生という職業も身近だったので教職免許をとりました。そして大学を卒業し、晴れて地元の小学校の教師になったんです」
学校で教鞭をとりながら、週末は神戸や大阪に服を買いに行く生活を続けていたが、やはりファッションへの思いは捨てきれず、学校の承諾を得ながらも昼間は教員として子供に教え、夜間は専門学校へ通う生活にシフトしていったそう。1年で専門学校を卒業し、学校も退職、その後有名な老舗アメトラブランド、ブルックスブラザーズへと入社するに至ったのだ。
「当時、学校を辞めるとき、母親は泣いていましたね(苦笑)。そして、前職の会社に入社しました。当時はカジュアルなスタイルだったので、ドレススタイルの基礎を学ぶのはすごく新鮮でした。いろいろと勉強させてもらって、アメリカへの憧れや、アメリカブランドへのリスペクトが強くなったんです。だからこそアメリカブランドは自分のライフスタイルに欠かせないものになっていますね」
紆余曲折を経て、念願のファッション業界に足を踏み入れた西野さん。現在はその高き頂を目指しているが、その探求心が尽きることはない。
●Levi’s(リーバイス) 501 66前期
自分のなかでのバランスがいいヴィンテージデニム
●New Balance(ニューバランス)N993
アメリカのおじさんが履いていそうな野暮ったいデザインが魅力
●SIGMA(シグマ)dp2
味のある仕上がりもいいが何よりこのフォルムに一目惚れ
西野大士(ニシノ ダイシ)
にしのやディレクター兼ニートデザイナー。長きにわたりファッション業界に身を置きながら、元教師という異例の肩書を持つ。アメトラの老舗ブランドで培ったドレスの知識と、ファッションに対するあくなき探求心から、自らのブランドNEATを立ち上げる。その個性豊かなキャラクターから事務所にはいつも人が集まる。
STAFF CREDIT
Photography:Kenji Fujimaki
Writing:Yasuyuki Ushijima