クリエイターの嗜好品
~シップス メンズプレス河野さん~ 第2回
2019.02.11
誰しも、お気に入りのモノがひとつやふたつはあるだろう。だからこそファッション業界で働く、デザイナーやプレスなどのクリエイターたちがどんなものを選び、愛用しているかは気になるところだ。今連載“クリエイターの嗜好品”ではタイトルどおり、毎月、ファッション業界で働く人々の、これぞという嗜好品をその人の目線から語っていただこうと思う。第2回はシップスでメンズプレスを担当する河野さんのお気に入りを紹介していきます。
バックグラウンドが語れる紳士のアイテムが大好物
3大老舗セレクトショップの一角を担うシップスで、メンズのプレスを務める河野さん。同社のドレス部門の販売員を経て、現在はファッション界の花形でもあるプレスを担当している。生粋の服好きで、高校生の時から雑誌を読み漁っていたそうだ。
「その頃、服における知識を得ることができるのは、雑誌でした。だから、雑誌を隅から隅まで読んで、ファッションの知識になるようなものを蓄えていきました」
次第に雑誌に登場する、ブランドの成り立ちやモノづくりにストーリーがある、老舗ブランドの逸品、そして紳士のアイテムに惹かれていったそう。
「本当に洋服が好きだったので、ファッション業界に入るという流れは自然でしたね。高校生の頃、同じようにファッションが好きで一緒に買い物へ行っていた部活の友達も、競合他社ですがファッション業界に就職したので、お互い切磋琢磨していますよ。今でも、定期的に会って飲んだりしていますね(笑)」
販売員になってからは、はじめカジュアル部門の販売を経て、その後ドレス部門に配属された。そこでは上司や先輩のスタッフから、ドレスの着こなしについていろいろ学んでいったそうだ。
「職場がドレスなので、スーツやジャケパンで出勤するのですが、その日にコーディネイトしてきたスタイルについて、上司や先輩スタッフに質問されました。“どうしてこのスーツの色に、このネクタイを選んだのか?”“どうしてこのシャツと、このネクタイを合わせたのか?”など事細かに、その意図を聞かれました。はじめはもちろん、正解などわからなかったのですが、当時はなんとなく組み合わせていたスーツやシャツ、ネクタイもそうやって考えることで、自分のコーディネイトの基本みたいなものが構築された気がします。その時は面倒でしたが、今となってはそうやって指導していただいて感謝していますね」
そこからは一層、ドレスアイテムや老舗ブランドの名作についても興味が湧いてきて、自分で身に着けたりすることで、その良さを実感していくようになった。
「スーツは完成されたアイテムなのですが、トレンドは時代によって変わっていきます。今でも毎日、勉強中ですよ」と河野さんは語る。服好きがあくなき探求心で掘り下げると、紳士の装いに行き着くのは必然なのかもしれない。
●黒/DENTS(デンツ)、茶/HESTRA(ヘストラ)のペッカリーグローブ
スーツに合わせるならこれほど雰囲気の高まるグローブはない
●YARD-O-LED(ヤード・オ・レッド)のボールペン
シルバー製のクラシカルなデザインが格調高い逸品
●CARUSO(カルーゾ)のベルテッドコート
スーツにもカジュアルにも合わせられる一生モノのコート
河野建徳(コウノ タテノリ)
シップス メンズプレス。歴史あるショップとして3大セレクトショップの一角を成すシップスの若きプレス。ドレスカテゴリーのスタッフを経て、プレスに就任したのでドレスに関する着こなしや知識も豊富。長身かつ整った顔つきで服も似合うことから、スタッフの着こなし撮影に引っ張りだこ。
STAFF CREDIT
Photography:Kenji Fujimaki
Writing:Yasuyuki Ushijima