退屈な日常にちょっとだけ刺激を!!

H2O Style

視覚・聴覚・味覚……五感で心に潤いを。
Vol.6 オールディーズ_その2「“サッチモ”」

2018.07.20

好きなコトやモノに囲まれて生活するのも幸せですが、あえてこれまで慣れ親しんだことがない世界に身を投じてみることで新しい発見もあるはず! そこで、デザイナー宇留間能力が“五感への刺激”をテーマーに音楽や書籍、食材など、いま改めて触れてもらいたいモノやコトを紹介していきます。

世界一魅力的なダミ声

今回のオールディーズ(ジャズとして紹介したほうがスマートかもしれないが)は、“サッチモ”ことルイ・アームストロングだ。彼のクリッとした目と人懐っこい笑顔と、そのギャップ激しいダミ声。トランペット奏者ながら、歌ってみればその超個性的なダミ声で世界を魅了した『What a Wonderful World』は掛け値なしで名曲だ。(G・ダグラス作曲、ジョージ・デヴィッド・ワイス作詞。アルバムのライナーノーツより)
前回のサム・クックもそうだけれど、見聞きした限り、彼らが活躍した頃はまだまだ露骨に人種差別激しいアメリカの社会だったという時期。彼らには人気があり、お金もあったであろうことは容易に想像できるけれど、私が聞いた“サッチモ”のエピソードは、そんな人気者の“サッチモ”ですらホテルから黒人に貸す部屋はないと追い出されたというもの。そんな目にあってなお、そんなことは取るに足らないこと、『What a Wonderful World』(世界はなんて素晴らしいんだ)と、この曲を歌い上げてしまう“サッチモ”、すげぇ! というところ。純粋にこの曲を聴いてみて感じてくるメッセージは、争い事なんかやめて美しい花や雲が浮かぶ青い空を見、大切な人と一緒に過ごすだけで世界は素晴らしいって感じるだろ? といったところだろう。身体から力を抜いてリラックスし、ゆったりとしたリズムとフレーズのこの曲を耳にするだけで、なんだか不思議と暖かい気持ちがしてくるのだ。
お馴染みの「ハロードリー」やこのアルバムラストを飾っている「聖者の行進」は私的に最高傑作! そのほか名曲ぎっしりの2枚組・合計30曲のベストには歌詞と一緒になったライナーノーツもあるので、アルバムに耳を傾けながらちょっとした“サッチモ”の側面、小ネタ的エピソードにも触れることができてオススメだ。

宇留間 能力(ウルマ チカラ)
グラフィックデザイナー。現在は電子配信のエディトリアルデザインを中心として書籍装丁など小型グラフィック、雑誌広告、美術展パンフレント等のデザインもこなす。趣味はジャンルを問わない音楽鑑賞、読書など。